この記事では私のソロ登山中に体験した、山での怖い話・プチ遭難体験についてご紹介します。
誰でも登山歴を重ねていくと、ほんのちょっとのことではあっても
ヒヤリとした経験や、あの時は怖かった、あれっていったい何だったの???
などなど…。
そんな経験がありますよね。
自分自身の経験ではなくても、知り合いの体験談など、それは時に自分自身に置き換えて考えてみることで
万が一、自分自身が山でそんな出来事に出会ってしまった時のため、もしくは万が一な出来事に出会わないためのヒントになるかもしれません。
私の経験談は大きな遭難でもケガをしたわけでもありませんが、誰かのために少しでも役立つかもしれない。
自分自身が怖い思いをしないためにも、振り返り書いてみることにしました。
霊仙山でのプチ遭難
これは2017年春の事です。
私は看護学校を卒業し病院に就職、子供たちはそれぞれ学校ということで、平日休みにやっと一人時間を満喫できるようになったばかりの頃です。
結婚から出産、育児、転居、資格取得と忙しい日々を送ってきましたが、小さい子供を連れてでも行けるようなハイキングには年に数回、家族で行く程度の登山は続きてきました。
さて、ようやく一人でも山登りができる時間ができてきた!
これからはいろんな山岳地域にも足を運び、山を楽しもう!!
と、少しずつソロで近場の低山を登っている真っ最中。
「次はどこ行こう?」と、自分の行動範囲も広がり楽しくて仕方ない時期でした
(あ、今2021年も山は楽しくて仕方ないです。)
霊仙山とは
鈴鹿北部の一角を占める霊仙山は、石灰岩カルスト台地のゆったりと広がる山容が魅力の山だ。山稜のササ原からの眺望は雄大で多彩な登山コースが楽しめる人気の山となっている。春や夏の花を求めて登る人も多く、とくに西南尾根のフクジュソウは見ごたえがある。
参考:引用文献 昭文社 山と高原地図より
鈴鹿山系の中でも花の百名山であり人気の霊仙山。
榑ケ畑(くれがはた)の登山口駐車場はすぐにいっぱいなる。
私は以前に一度、霊仙山へは登山にきたことがあるため迷うことなく廃村を通り抜け登山道へと進む。
実は一度来た、とは言えその時は強風のため稜線に出る前に撤退を決めたため山頂は踏んでいない。
その撤退を決めた箇所=カルスト台地が広がる稜線に上がる手前の急登の地点
そこまでは全行程のわずか1/4程度でしかない。
つまりそれ以降の3/4は初見であり、自分できちんと道を外さないよう歩かなくてはいけない。
この日、私には大きな目的があった。
ヤマシャクヤクだ。
このお花の自生地を、花に詳しいヤマトモ(=山友達)さんから教えてもらっていた。
彼女が教えてくれたのは2か所。
爽やかな樹林帯歩きの途中、まずは一か所を発見。
順調に進んでいる。
朝の光を受け綺麗に咲く野生の白いお椀のような美しい花に惚れ惚れした。
エビネやニリンソウなど春の花を見つけては一人ウキウキと登山を楽しんだ。
周囲には時々、前後する登山者もおり、心細さを感じることもなく順調に山頂まで進んだ。
ところどころにある窪地のドリーネや、石灰岩のごつごつとしたカレンフェルト景観には目を奪われる。
特徴的な景観に鈴鹿山系にこんな地形の場所があったなんて!
標高は低いものの、日本アルプスを思わせるような山歩きが楽しめる。
天気が良く視界も良好。
見晴らしがよいので少し離れた箇所を歩く登山者の姿も見えた。
山頂で大休憩をした。
ガスで湯をわかし昼食。
この時、近くにいた二人連れの登山者と少しの会話を楽しんだ。
私とは同じルートだが反対周りで周回されるとのこと。
これから自分が進むルートのこと、下山する今畑の廃村のあたりで工事をしており少しわかりにくいポイントがあることを詳しく教えてくれた。
お礼を言い、それぞれの方向へと向かい出発。
眺望のよい稜線歩き。
ただ少し疲れが出てきた。
遠くに琵琶湖、幾重にも連なる鈴鹿の山並み、お花…。
日差しを遮る場所がなく暑かったのかもしれない。
西南尾根の急な下りの途中、何を思ったのか?
私は前を歩く二人組の登山者につられてルートを進行方向から右手へと入っていった。
ここが分かれ道だった!
獣道のようなうっすらとした道をたどっていくと徐々に杉の植林地の伐採した跡地に入っていった。
この時すでに私の前を歩く二人組を見失った。
あれ?どこにいったのかな?
振り返ると、遠く来た道の方向に人影が見えた気がした。
あれ?あの人たちは戻ったのかな?
本当にこの方向であっている?
迷った?いやいや、ちゃんと道が続いているのでは?
徐々に不安な気持ちが現れ始めた。
でも、植林地を伐採してあり明らかに人の手が入っている気配があるし…。
「もうちょっとだけ行ってみよう」
地図を出し広げる前に、そんなことを頭の中で考え進んでしまう。
あれ?
何か聞こえる。
風に交じり何かが聞こえる。
一生懸命に耳を澄ます
人の声がする
なぜか自分が進もうとしている方向の尾根むこうから複数人の女性の楽しそうな話声や笑い声がした。
そうか、こっちで合っているのか。
私は少しほっとしてどんどん進んでしまった。
しかし、気が付くと登山道らしき道がなく植林の伐採跡地の中におり徐々に傾斜が強くなってきた。
ハッと我に返ったように、どうやら本当に道迷いしていることに気が付いた。
ここではじめて地図を出した。
天気良く、視界も良好、自分の元来た方角もわかる。
まずはいったん戻ってみよう。
私はほぼ方角は間違うことなく無事に登山道に復帰することができた。
1時間程度のロスだ。
西南尾根の急登の底の方、樹林帯の入り口手前あたりに一人の登山者の影が見えた。
良かった、人だ!
どれだけ安心したか。
ここで私はぐいぐいと歩みを早めロスした分を摂り戻すようピッチを上げた。
なんとしても日没までに下山しなくては。
ヘッドライトを持っているとはいえ、はじめての山で暗くなってしまってはますます心細く、また道迷いをしかねない。
とにかく安全に下山することに集中した。
その先の登山道は、山頂で出会った登山者から教えて頂いていた通りに歩けたので間違わずに無事に登山口まで戻ることができた。
下山の時刻も、陽が陰り暗くなっていることもなく、一見、普通の下山だ。
しかし、自分の中で「道迷い」してしまったことが大ショックだった。
道迷いの原因は?
先に記載の通り、西南尾根で前を歩く登山者につられて道をそれてしまったこと。
自分で地図を広げてすぐに確認しなかったことだ。
今だからこそわかるが、一人で知らないルートを歩いてきて、疲労が出てきたところに気の緩みがでてしまったのだろう。
誰か(前を歩く登山者)に頼ってしまいたい、そんな甘えがでてしまったのではないだろうか。
注意ポイント
そもそも霊仙山は遭難が多い山?!
ヤマレコの霊仙山の情報ページには「道迷い」による救助が多いの記載あり。
また、山と高原地図の西南尾根には「踏み後わかりにくい」の記載あり。
あの声の主は?
下山後のこと。
この話をヤマシャクヤクの自生地を教えてくれたヤマトモさんに話したところ、「ついに出会ってしまったのね!」と言った風に、彼女は山での怪談話と受け取ったよう。
私の感想は?
う~ん。本当にオバケの仕業だったのかな?そもそも自分が道を間違えただけだよね?
実際のところは誰にもわからないと思いますが、私個人としては人間は見たいもの見て、聞きたいものを聞くという習性があるため、きっと不安感から風の音を人の声と聞き間違えたのでは?と考えます。
でも、まあ。
確かにあの時は、複数人の女性の楽しそうな話声、笑い声だったんですけどね。
こんな本も出ているぐらいなので、もしかしたらこの記事を読んでくださっているあなたもいつか出会うかもしれませんね。
プチ遭難から、その後、注意するようになったこと
遭難しないためのポイントはここでは書ききれない程、膨大です。
ここでは私自身がこのプチ遭難体験から特に意識するようになったポイントの紹介をします。
ポイント
- 事前の計画段階で危険個所を把握する
- 自分のレベルにあった山行計画にする
- 極力、単独登山(ソロ山行)はしない
- 直前まで天気予報をチェック
- 同じような景色、単調な景色など道迷いしそうな箇所を意識する
- 悪天候時は迷わず山行中止する
- 急な天候変化に対応できるよう防寒、雨具、エマージェンシーキットは必ず持つ
遭難に関連する書籍がたくさん出版されています。
直近の雑誌ではデータや事例をもとに解説されています。
記事中でも「道迷い遭難は低山の方が多い」の記載あり