今回は関西からはるばる遠征、赤石山系の甲斐駒ヶ岳です。
昨年の甲斐駒ヶ岳~鋸岳の縦走登山に引き続き、2回目の登攀です。
クラシックルート(黒戸尾根)で、残雪期の甲斐駒ヶ岳をじっくり味わってきましたよ♪
ココがポイント
総合力が試される脱・中級ルート
雪山 上級ルートです。
転倒・滑落のリスクや、重装備、長時間行動、不明瞭な尾根など…。様々なハードルを自らの経験と技術で乗り越えていく登山の醍醐味ともいえる山行です
甲斐駒ヶ岳
南アルプスの北端、山梨県と岐阜県にまたがる日本アルプス屈指の名峰。
古くから山岳信仰の対象となってきた修験の山です。
標高:2967m
- 日本百名山
- 新・花の百名山
- 山梨百名山
- 日本百高山
- 信州百名山
- 一等三角点百名山
- 新日本百名山
- 甲信越百名山
黒戸尾根ルート
- 標高差約2200mの急峻な尾根を行く。
- かつての信仰登山のルート。傾斜の強い岩場など修験の場の厳しさがある。
- 年末年始より2月以降の方が積雪量が増える。春の方が状態が悪い。時期によっては七丈小屋までラッセルもあり。
- 七丈小屋下部の岩場には垂直の階段梯子など鎖、梯子の連続。
- 核心部は8合目より上部。雪稜と岩場の通過、慎重なルートファインディングが必要。
- 8合目より上部では数年に一度は滑落事故あり。特に下山は慎重に!!
※上記、参考引用文献
コース・行程
基本情報
日程 1泊2日(2019年4月6日~7日)
参考コースタイム
1日目:7時間50分
2日目:9時間10分
1日目
尾白川渓谷駐車場→竹宇駒ヶ岳神社→笹の平分岐→刃渡り→刀利天狗→五合目小屋跡→屏風小屋跡→七丈小屋 (泊)2日目
七丈小屋→八合目御来迎場→駒ヶ岳神社本宮→甲斐駒ヶ岳→駒ヶ岳神社本宮→八合目御来迎場→七丈小屋→屏風小屋跡→五合目小屋跡→刀利天狗→刃渡り→笹の平分岐→竹宇駒ヶ岳神社→尾白川渓谷駐車場
内容
春山シーズンの高所登山として、今回は甲斐駒ヶ岳を選択しました。
積雪期から残雪期となった山は、日照時間が延び温かくなり行動しやすくなる時期でもあります。
春山の難しさは、短期間で急激に気象が変化すること。
冬に逆戻りし雪が降り積もったかと思うと、また暖かくなり雪が解け…そしてまた寒くなり氷結する。
その氷の上にまた雪が降り…
残雪期の春山は日々、雪質が大きく変化します。
すなわち雪崩の危険性も高くなるということです。
危険が予測される場合は、無理せず撤退!!
これらのことを念頭に置きながら、G.W(大型連休)前の静かな甲斐駒ヶ岳を楽しみます。
装備
必携!!春山装備- 冬用登山靴
- 冬用ヤッケ(上下)
- 化繊(もしくはウール)の下着(上下)…(tomoは厚手メリノウールの長袖+メリノウールタイツ)
- 中間着…(tomoはソフトシェル)
- 防寒着…(tomoは化繊ジャケット(今回は着用せず)
- 冬用靴下
- オーバー手袋…(tomoは防寒テムレス+未脱脂ウールの手袋)
- ロングスパッツ(ゲイター)
- バラクラバ(目だし帽)
- サングラス(orゴーグル)
- ヘッドランプ
- 12本爪アイゼン
- チェーンアイゼン
- ピッケル
- ハーネス(tomoは簡易ハーネスを持って行きましたが今回は使用せず)
- ヘルメット
- 行動食
- 水筒(テルモス)
- 日焼け止め
- 飲用水(黒戸尾根の水場は七丈小屋だけです!!)
- 安全環つきのカラビナ
- 確保器
- 120cmスリング
- 薬品類
- ストック
- 薄手の手袋
- 嗜好品(お酒・おつまみなど)
- 小屋泊用品…(tomoはダウンパンツ・枕に敷く用のバンダナなど)
一日目
遠征前にちゃっかり楽しみ、時間を有効活用♪
そして当日。
名古屋を早朝に出立!いざ南アルプス、甲斐駒ヶ岳へ!!
無料駐車場に到着。
私たちの他に登山者がチラホラみえますが…。
どうやら甲斐駒ヶ岳への登山者は私たちだけのよう。
この時期の入山者は少ないようですね。
おっと失礼💦
この看板を見たら「甲斐駒ヶ岳の登山口」とすぐわかるようなインパクト大ですね!
登山ポストに登山届を出しました。
少しでも春の気配を感じたく、お花がないかキョロキョロ。
唯一、スミレを発見♡
どんなに小さな花でも、見つけると嬉しいものですね。
渓谷沿いのキャンプ地は気持ちよさそう!
きっと夏はにぎわっているのでしょうね!
途中、竹宇駒ヶ岳神社があります。
甲斐駒ヶ岳は古くから山岳信仰の対象となり、修行の場、霊山として登拝されていたそうです。
(駒ヶ岳講と呼ばれ、今も残っているのかな??)
こちらで、登山の安全祈願のお参りをしました。
登山をしていると、こういった修験のお山が多いことがわかります。
フキノトウ。
春ですね!!
さて、このつり橋を渡ると、いよいよ登山口です。
青く澄んだ川の水。
甲斐駒ヶ岳の雪解け水かな?
いよいよ黒戸尾根登山道のはじまりです。
つり橋を渡ると、いきなり急登ですよ。
岩がゴロゴロの登山道。
九十九折の岩ゴロゴロ地帯を少し登ります。
落ち葉たっぷりの気持ちの良い林に出ました。
天気が良いのはうれしいですが、紫外線が気になるところ。
ニット帽しか持ってなかったので、ガーゼのタオルハンカチで顔を覆い日焼け対策。
途中に出会った印象的な木。
はじめてのルートの時は特に目印になりそうな対象物を覚えておくようにしています。
単調なルートから、やっと雪をかぶる山が見えテンションアップ!!
今日の目的地は小屋までだから7時間はかからないはず!
ここでオニギリ食べ大休憩。
エネルギー補給しました。
分岐から刃渡りまでが、また長く感じました💦
早めのチェーンアイゼンを装着で転倒対策です。
笹平の分岐~刃渡りまでの区間が、私は一番、苦手な箇所でした。
登りと下りなら、私は断然、登りの方がしんどさがマシなのですが…。
この区間、翌日の下山時には雪が解けアイスバーンになっている箇所と、雪が解けドロドログチャグチャの箇所が混在していました。
急登に疲れが出たころ、大休憩で座った木陰から鳳凰三山が見えました。
元気がもらえますね。
ここで、この日、唯一の下山してくる登山者と会いました。
どうやら前日の入山者はこの方のみだったようです。
山上(8合目より上部が核心部!!)のトレースの状況などお話を聞かせていただきました。
幸いにも、トレースはしっかりありそうです。
あとはこの気温でどの程度、雪質が変わるのか?
(雪質により雪崩の危険性あり!)
雪が斜面を覆っています。
暖かな日だったため雪は湿って柔らかかったです。
注意ポイント
刃渡りは天望が開けているため絶景が眺められる場所でもあります。
鳳凰三山。
八ヶ岳もくっきり見えます。
刃渡りでは、足元の安定した箇所をちゃんと選んで、写真撮影しました。
刃渡りから少し進むと、ついにハシゴ、鎖場のゾーンに突入です。
刃渡りを過ぎたあたりからチェーンアイゼンから12本爪アイゼンに交換しました。
刀利天狗に到着しました。
ここで大休憩。
サーモスに入れてきたチャイで身体の中から温まりました。
寒い日には休憩時の温かい飲み物で、身体の中から温めることで低体温症の予防になります。山にサーモスは必需品ですね!
なだらかな雪のモフモフ地帯を進みます。
ここが5合目の小屋跡。
下山時に一張りテントがありました。
甲斐駒ヶ岳は冬季クライミングのルートが複数あるようです。テントの主の二人連れの方たちはアイスクライミングを楽しまれたようですよ♪
やっと目指すお山、甲斐駒ヶ岳が見えた
5分程、くだった先に屏風小屋跡があります。
雪に石仏が埋もれていて、お不動さんの頭だけが見えていることも💦
さて、ここからが本当の1日目の核心部。
この急登を乗り越えた先に七丈小屋がありますよ!
アイゼン、ピッケルワークを確実に!
短い距離でも落ちたらアウトの岩場のトラバースもあります。
必ず鎖を把持し安全確保しながら進みます。
下の段の崩れ具合を見ると、緊張感があります。
ピッケルの使い方(雪面への刺し方)はその場の状況に合わせて、確実に効いていることを確かめながら一歩一歩を確実に。
テムレスはゴム手袋。
明らかな危険個所では誰でも注意するもの。意外と滑落や転倒事故が起きるのは、なんでもないような気の抜ける場所で起こっているようです。
七丈小屋
いつ階段ハシゴが終わるのだろう?
なんて感じ始めたころ、やっと、七丈小屋に到着しました。
小屋が見えた時は思わずホッと安堵しましたね。
まずは小屋に入り、落ち着きましょう♪
小屋に入るなりまず目についたのが、この大きなお鍋。
ストーブの上に置かれた寸胴鍋で雪を溶かしています。
こうやって小屋の作業用の水を確保しているそうです。(飲用水ではありません)
何気なく壁にかけられたカレンダー。
鳥観図というのかな。
ついついこういうグッズに目が留まります。
夕食までの時間、荷物を整理したら小屋の外に出てみました。
ポイント
17時から夕食です。
おかわり自由のカレーライス。おかずも少しついています。
小屋番さんたちと、おしゃべりしながら団らん♪
少し焼酎のお湯割りも飲みました。
この日の宿泊者は私たちだけだったため、リラックスして口もすべらか!?
オーナーの花谷さんは残念ながら不在でしたが、皆さんと楽しいひと時でした。
寝床はロフトになった2階に布団を敷いてくださっていました。
20時消灯。
小屋内は暖かく、ぐっすり眠れ快適に過ごすことができました。
翌朝。
前日のうちに起床、出立時間をお知らせしていたので、晩のうちに朝食用のお弁当を準備してくださっています。
食べてから出発するもよし。
もって山上で食べても良し。
私たちは明るくなった日の出とともに行動予定だったので、小屋で朝食を食べてから出発です。
お味噌汁用(インスタント)の湯もあり、温かな小屋の中でしっかり朝食を摂ることができました。
二日目
2日目。
あいにくの曇り空。
しかし朝のうちなら雨や雪の心配もなさそうです。
不必要な物品は小屋にデポさせてもらい、最低限の荷物で山頂アタックです!
テント泊のソロのタフガイさんは先に出立しているようです。
コレ、「雪まくり」と呼ばれているようです。
雪まくりとは、まれにみる気象現象である。風により地面に積もった雪が、シート状にまくりあげられ、絨毯を巻いたような形状が作られる。いわば自然が作る雪だるまである。
出典:Wikipedia
太陽の光が斜めにさし景色がほんのりピンク色で好きな時間帯です。
しっかりトレースが残っていたおかげで、ゼロからのラッセル、ルートファインディングも容易でありがたいですね。
モフモフの雪を一歩ずつ進みます。
高所とは思えないような、おだやかな風で、時折吹き抜ける風が心地よいです。
着実に前進!
山上を目視でき、ワクワクが半端ないです!!
徐々に迫りくる黒戸尾根の核心部。
ついに来た!!
あのギザギザは鋸岳。
ちょっと立ち休憩。
温かい飲み物で気合を入れましょう♪
よし。
ここからが本日の核心部!
気を抜かず、スピーディーかつ慎重に!!
風がないので空もスッキリと晴れません。
しかし登るには良い環境だったと言えると思います。
寒さや風に苦痛を感じることなく、快適に安定して前に進むことができました。
先に出立しているテント泊のソロのお兄さんのウェアを時々山上に確認。
お兄さんも私たちの存在に気が付いたようで、途中、お互いに手を振り挨拶しました。
ここからが大本命の危険個所。
上記、写真中央の大岩を左に巻くのは夏道。
正解の冬道は右に巻きますよ。
この時、大岩を左に巻くようにトレースが薄っすらついていたため、私は同行者に確認の声掛けをしました。
同行者がちゃんと右で合っていることを理解しており、先達してくれたために間違いなく進むことができました。
そしてルンゼ上の地形に突入。
本来ある鎖は雪で埋まっているため使えません。(G.Wごろまで埋まったままのようですね)
ルンゼを抜け、あがってきたところ。
急な雪壁となり、登山者の力量によってはロープを積極的に用いなければならない場所となります。ロープがない場合は、間違いのないアイゼン・ピッケルワークが求められます。
参考引用:七丈小屋HPより
無事、ルンゼを抜けると…。
2本剣の烏帽子岩に到着。
二本の鉄剣は風で少し揺れていました。
そして山頂までは尾根道を進みます。
写真はありませんが、ここもスラブ上の岩の上に雪が張り付いており、慎重に通過しました。
甲斐駒ヶ岳に登頂です
感動を伝えたくて、はじめて山頂からインスタグラムに動画を投稿しました。
今回の山行は、私、一人の力では到底、成し遂げることはできなかったと思います。
また一つ、経験値を重ねることができ嬉しいです。
雲がなかなかとれないため、かすんでみえますが周囲の山々も見渡せました。
山頂はさすがに風が少しありますが、厳冬期の強風に比べたらたいしたことない程度です。
雲が立ち込めてくる前に下山しましょう。
山頂で長居はせずに早々にくだりはじめます。
振り返ると、ほんの一瞬の青空が覗きました!
下山こそ、慎重に。
再び、慎重かつ的確なアイゼン、ピッケルワークを意識して歩き始めました。
山頂をゲットしたからと言って、最後まで気は抜けません!!
風の当たらない場所で、大休憩。
温かい飲み物と、行動食でエネルギー補給しました。
2日目の核心部といっても過言ではないでしょう。
ルンゼの通過。
下山時が一番、要注意です。
今回の山行で一番、緊張した箇所でしたが、一歩ずつ確実に進むことでクリア!
集中!!
髪の毛、乱れていたって気にしている暇ありません。
下山は…
再び七丈小屋に戻ってきて、温かなおでんを頂き大休憩。
実は、私の体調不良のため下山に時間をかなりの時間を要してしまいました。
さすがに黒戸尾根。
本当に長いです( ;∀;)
時間はかかりましたが、確実に一歩ずつ。
着実に前進していることを踏みしめながら…。
そして最後は竹宇駒ヶ岳神社で無事に下山したことを報告して帰路へと戻りました。
まとめ
残雪期の甲斐駒ヶ岳。
はじめての登攀でピークに達することができたのはラッキーでした。
しかし自分の健康管理はじめ、反省点、学ぶ点が多くありました。
決して自分の力だけで成し遂げたとは思いません。
雪山は日々変化する環境に合わせて、撤退もよくあること。
晴天ではなかったものの、今回のように登りやすい環境条件があったからこそ登攀が可能だったと思います。
もちろん、事前の情報収集・安全のための装備の準備、装備の扱い方や行動術、歩行技術などなど…。
日々積み重ねてきたこれまでのトレーニングあってこそのチャレンジです。
私はまだまだ山岳会で学びながら経験値を上げている最中。
実践しないと見につかない面も多いと思います。
これからも確実に経験を積みながら、安全登山を心掛けステップアップしていきたいと思います。