2023年6月 梅雨の晴れ間の週末
ツクモグサとウルップソウが見たく八ヶ岳は横岳の西壁にある小同心クラックへクライミングに行ってきました。
クライマーでお花に興味がある方は意外に少ない印象ですが、
私は今回のような花を愛でながら岩稜帯を歩いたりクライミングする山行が大好きです。
八ヶ岳は花の百名山
八ヶ岳が花の百名山(「決定版 花の百名山」山と渓谷社)のうちの一つであるとご存知でしたか?
実は、筆者は八ヶ岳と言えば雪山(アイスクライミング)のイメージだったので、お花のイメージはあまりありませんでした。
過去の山行記録を見返してみると、あった!ありました。
そう、八ヶ岳と言えば硫黄岳に群生するコマクサのイメージです。
しかし、まだ山岳会に入って1番はじめの山行で八ヶ岳の大同心稜ルートから横岳を登頂した時に花期も終盤、終わりかけのウルップソウをみたことを思い出しました。
私自身が知らなかっただけで、八ヶ岳って
- ヤツガタケキスミレ
- ヤツガタケアザミ
- ヤツガタケトウヒ
といったヤツガタケを冠した植物が多くあるようです。
また、今回この記事で紹介するツクモグサやウルップソウといった八ヶ岳以外では数か所にしか生息しない希少な植物もあります。
参考文献
- 花の百名山 地図帳 山と渓谷社
- 山と高原地図33 八ヶ岳 昭文社
ツクモグサの特徴
ツクモグサ
ツクモグサ(九十九草)
- キンポウゲ科オキナグサ属の多年草
- 開花時期:6月上旬ごろ
- 花茎の高さ:5cm 花後の茎高:15cm 花:約3.5cm 緑色がかったクリーム色
- 日本固有の高山植物
- 分布地:北海道 本州(白馬岳と八ヶ岳)
- 絶滅危惧種
参考引用:Wikipedia
ウルップソウの特徴
特徴
ウルップソウ
- ゴマノハグサ科。
- 北海道・礼文島と八ヶ岳、北アルプスの一部でのみ咲く貴重な花。
- 花は鮮やかな青紫色で穂状につき、下から上に咲く。花茎の高さは10~20cm。
- 葉は肉質で光沢がある
- 横岳~硫黄岳の縦走路で6月下旬~7月中旬にかけて見られる。
参考引用文献:花の百名山 地図帳
山行記録
小同心クライミングをしながら、今のこの時期ならではのお花「ツクモグサ」と「ウルップソウ」を愛でることを目的にした贅沢な日帰り山行です。
概要
日程:日帰り
ルート:赤岳山荘-赤岳鉱泉-大同心沢分岐-大同心基部-小同心基部-小同心-横岳山頂(奥の院)-大同心稜-大同心基部-大同心沢分岐-赤岳鉱泉-赤岳山荘
※小同心クラックは人気ルートなためシーズン中の週末にはたくさんのグループが入り、順番待ちで渋滞することが多々あります。
待ち時間が長くなりそうな場合は大同心基部-大同心稜-横岳(同ルートをピストンで戻る)へ変更する計画にて出発しました。
出発~小同心の取り付きまで
山行の前日はドライ壁での講習を受けており、いつもお世話になっているyastugatake J&NさんでBBQ&宿泊でした。
アイスクライミングの仲間たちが大集合!
今回は人数もかなり多く、お店を貸し切り盛大な宴となりました。
普段ならこういった楽しいパーティの場では、ついつい飲みすぎちゃうタイプなのですが(;^_^A
今回は翌日の山行のために飲みすぎないよう気を付けました。
早めに出発するため、朝食はおにぎり弁当をお願いしました。
半分は食べて、半分を行動食替わりに持っていきました。
林道をガタゴト車ですすみ、赤岳山荘(通称おばちゃんち)に停めさせていただきました。
4時半ごろに出発。
北沢ルートでまずは赤岳鉱泉を目指します。
いつも行き帰りにお参りする「山の神様」でご挨拶もかかせません。
山の神様の手前あたりで唯一みつけたクリンソウは色がとっても鮮やか!
堰堤をすぎ、沢沿いを歩くようになるとカラマツソウもひっそりと咲いています。
キバナノコマノツメ
鉱泉が近くなると沢が赤っぽくなる
沢を左右に橋を何度もわたりながら進みます。
ルート上、そこいらじゅうにミツバオウレンのお花畑になっていて明るい登山道です。
新緑とお花に癒される沢沿いの登山道歩きは楽しいです。
赤岳鉱泉に到着しました。
かなりの数のテントが張ってあり、この週末の八ヶ岳人気がうかがえます。
美濃戸の路上駐車もものすごい数だったようです。(もちろん駐車禁止の切符きられるみたいですね)
赤岳鉱泉の外のテラスで小休止です。
前日のJ&Nで購入したチョコクロワッサン♡
絶品なので本当にオススメですよ。
イワカガミ
タケシマラン
赤岳鉱泉を出発しすぐに大同心沢の分岐があります。
(一般登山道で硫黄岳を目指す方は間違えて入り混まないように要注意です)
オサバグサ
ヒメイチゲ
この白くて下向きに咲いているお花「オサバグサ」
こちらも日本固有種のお花で、めちゃくちゃ可愛いと思いませんか?
ミネサクラ
イワベンケイ
徐々に標高を上げると、大同心がみえてきます。
植物も高山植物らしくなってきますよ。
ヨツバシオガマ
オヤマノエンドウ
大同心の基部に到着しました。
先着のグループが何組かいらっしゃいますが、話を聞くと小同心にはまだ入っている人はいないとのこと。
どうやら私たちだけの貸し切りのようです!
小同心へのトラバース中に振り返り見た大同心
ツクモグサ♡斜面にあちこち咲いている!
後続がこないうちにと、迷わず小同心へむかうことにしました。
トラバースしている途中で後ろを振り返りみると、ガイド山行さんのグループが大同心稜をあがっていくのが見えました。
小同心基部への斜面をトラバースする道は要注意な場所ですが…
こんな場所にお花ってたくさん咲くのですよね(;^_^A
ちゃんと、足場が安定した場所で写真撮影しましたよ。
絶景です北アルプスまですっきり見渡せました
ゴツゴツの岩肌にひっそりと咲くツクモグサ
小同心の取り付きに到着です。
ハーネスやガチャ類を装着し準備する前にいったん休憩。
エネルギー補給しました。
お腹は空いてないけど少し補給しとく
大同心ごしの硫黄岳方面
暑くもなく寒くも風もなく、快適なコンディションです。
小同心クライミング~下山
今回はマルチピッチクライミングなので、つるべで登攀です。
私は2ピッチ目を担当ですが、最後、山頂手前のほんのちょっとの区間も念のためリードしました。
(以前まではそこはロープを出さずにフリーであがっていましたが、今回は安全のためにロープだしましょう!と私から提案。う~ん。でも、やっぱりフリーで上がれるなあという感じは否めませんでした)
登り慣れた小同心ですが気を抜かずにね
登りながらクライマーの頭ごしにツクモグサなんてシチュエーションも
はじめましてのツクモグサ
まさに、フワフワの産毛がなんとも可愛らしいお花です。
急斜面に複数咲いているのですが、みんな後ろ姿なのでお顔を観られる株をよ~く探しました。
3ピッチ目の登り切ったところがお楽しみ♡
まるでご褒美みたいに咲いて待ってくれていますよ
登攀中なので、ちゃんと安全確保ができる場所で写真撮影しています。
小同心の頭にいるところ、きっと横岳山頂の登山者から見られているだろうなあと視線を感じながら…
でも、私たちはお花に夢中なのでした!
咲き始めだからまだ楽しめますよ
鮮やかな紫色がウルップソウに負けてません
本当にそう感じる瞬間でした。
険しい岩稜帯に咲く、儚く小さな花々。
がんばって登ってきたご褒美みたいと感じてしまうのは私だけでしょうか?
山頂でガチャ類を片づけ
登ってきた小同心を見下ろしながら小休止
下山では大同心稜で一部懸垂下降をする予定です。
いったんロープをまとめ、懸垂下降にはいらないガチャ類を片づけました。
片づけ終えたら、おにぎりと前日にプレゼントしてもらっていたJ&Nさんのお菓子でコーヒータイム。
絶景を眺めながらの休憩は良いですね。
大同心稜をくだりながら クライマーがいます
私もいつか大同心をクライミングしたいな
大同心稜をくだっていきますが、バリエーションルートでありもちろんなんの案内もありません。
懸垂下降する地点まではよく注意しながら進みました。
つい大同心のクライマーに見とれて大同心の上部方面へ進まないよう注意します
再びウルップソウに出会えた
ハクサンイチゲとウルップソウ
チャンスがあればクライマーとお花のコラボ写真を撮影してみたかったですが、スマホでは無理でした
上の写真の風景を観ながら思うのは冬のアイスクライミングです。
冬もいろいろ遊ばせてもらっている八ヶ岳。
本当に良いお山です。
ミヤマキンバイ
カタバミ
大同心稜から大同心基部へ。
行きに登ってきた道を戻り下山しました。
朝は閉じていたカタバミの花も開き元気な表情に見えます。
予定していたより少し早めに下山完了です。
J&Nさんに戻り、お風呂と少し早めの夕飯をいただきました。
この日の私は運転はないので、アルコールのアペロールで乾杯です。
季節限定のグリーンカレーも最高に美味しかったです
まとめ
今回は梅雨の晴れ間の週末という良いタイミングで八ヶ岳へ遠征しました。
充実のレッスン後に、大勢のアイス仲間と楽しい宴。
そして翌日は日帰りで小同心へクライミング。
しかも、この季節、この場所でしか見られないような希少なお花を愛でることができました。
山行の最中も、特にアクシデントもなくスムーズに進むことができたのは同行してくれたザイルパートナーに感謝です。
八ヶ岳は1年中楽しめる上、お花の宝庫でもあります。
まだ見ぬお花もたくさんあるので、まだまだ長く通うことになりそうです。