映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」を観てきました。
エベレスト世界初の女性登頂者である田部井淳子さん。
著書の「人生、山あり¨時々¨谷あり」を原案に作られた映画です。

この記事では週末を山で過ごす一般女性登山者の目線から観た本作品の感想です。

※この記事は「てっぺんの向こうにあなたがいる」のネタバレ感想を含みます。
映画を観たきっかけ

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2025年10月31日公開の「てっぺんの向こうにあなたがいる」を見に行こうと思ったのにはきっかけがあります。
それは北部白山縦走した際に、下山後にお世話になった泰山さんから田部井淳子さんが作詞したという歌を聴かせていただいたことです。
北部白山管理人であり温泉くろゆりのご主人でもある泰山さんによると、この歌は
なんと田部井淳子さんが亡くなる2週間前にリピート山中さんへ届けられた歌だそうです。
※下記、動画の2曲目
リピートさんのYouTube動画はコチラ↓
「山ってやっぱりたのしいよ」
この歌詞には田部井さんの登山人生の中で積み重ねてきた経験の中から生まれたものであり、田部井さんの想いがそのままメッセージされているものでもありました。

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後編【北部白山】避難小屋泊で行く北縦走路を歩く(鶴平新道~中宮道)2025年9月
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映画を観る前に著書を読もう!

山と渓谷オンラインより アイガー山頂に立つ田部井さんと北村さん
本作品の原案本である田部井さん著・「人生、山あり¨時々¨谷あり」
こちらと、作品の中で天海祐希さん演じる北村節子(役は悦子)さん著・「ピッケルと口紅」
私はこの2冊を両方、事前に読んでおくことをおすすめします。

田部井さん、北村さんの各著書を先に読んだからといっても、本で読んだ時のイメージと違うため気持ち悪いというこはありませんでした。
この映画のキャストと実在の人物像とのイメージがかけ離れていて違和感を感じるということはなく、自然に映画の世界に集中して観ることができたこともこの映画の良さの1つかもしれません。
- 淳子=吉永小百合・のん
- 夫=佐藤浩市・工藤阿須加
- 友人の悦子(新聞記者・エベレストなど数々の山を一緒に登っている)=茅島みずき・天海祐希
- 長女=木村文乃
- 長男=若葉竜也
ピッケルと口紅
山岳映画ではなく「家族の映画」

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最近SNSなど本映画を観てきたよ!という報告のコメントと共に、山岳風景など山のシーンに期待していたがガッカリしたといった内容のコメントを見ることもあります。
しかし、この映画は登山の迫力映像を期待して観る映画ではないです。
田部井淳子さんはエベレストだけでなく世界7大陸最高峰を登頂するなど、登山人生のキャリアだけでもすごい数でありそれらを期待するとまた別の映画になるのでは?と思います。
この映画はあくまでも人間ドラマとして観ると深く心に響く作品だと思います。
山岳シーンを中心としたドキュメンタリー的な作品ではなく、田部井淳子さんを支えた家族、それぞれの立場や本音の部分まで描いた家族の物語です。
家族の本音、人間ドラマとしての深み

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映画では世界の田部井として活躍する淳子さんに対する、夫、娘、息子のそれぞれが抱く複雑な想いが丁寧に描かれています。
田部井淳子さんの著書からも、やんちゃな息子さんの子育てに苦労されていたような印象ではありますが…
「山好き」な同じ側の人間からみた視点で言うと、
私はこの映画のみどころは夫の正伸(役・正明)さんの心情について描かれている点だと思います。
ネタバレ注意
参考
田部井政伸さんプロフィール
谷川岳幽ノ沢中央壁左方ルンゼ初登攀、1968年グランド・ジョラス北壁、マッターホルン北壁とヨーロッパ3大陸北壁のうち2つの北壁を1シーズンで登攀するなど、国内外に多くの登山実績を残す。
1967年、石橋淳子さんと結婚。淳子さんは1975年エベレストに女性で世界初の登頂を果たす。
多忙な淳子さんの活動をサポートしつつ、自身も、多彩な趣味を持ち、1988年には、史上初の50㏄バイクでの北米大陸ノンストップ横断を達成。2009年までNHK文化センター川越教室の「健康山歩き教室」講師
参考引用・山渓オンラインより一部抜粋
ネタバレ注意
上記プロフィールを見ればわかるとおり、夫の政伸さんもかなり力のあるクライマーです。
劇中で「世界の田部井」となった母・淳子への反発心から、校則違反である金髪にピアスといった風貌、教師にも犯行的な態度をとる息子が、高校を中退。山から帰宅した淳子と自宅にいた政伸に(言ってはいけない)本音をぶちまけ衝突するシーンがあります。
この時、息子から政伸へ「指(あしゆび)さえあれば自分の方がエベレストへ登れた、登りたかったのではないか?」
(劇中の一言一句は覚えていませんが、このような内容の発言でした)と問い詰めます。
その場では「そんなこと一度も思ったこともないし、二度とそんなことを言うな」という返答だったと思います。
でもやっぱり、これって本音をズバリ言い当てられていたんですね。
と、ここまで書いてきましたが…

いずれにしても、私の中でモヤっとしていたものが色々解決したように感じた重要なポイントでした。
表面的にだけ観ていると夫の政伸は、まだまだ男性優位な時代背景のご時世に「天然記念物のような存在」と北村節子(役・悦子)に表現されており、活動的な妻を支える良き夫のように受け取られます。
しかし、ご本人にもいろんな葛藤がちゃんとあったのだということ描かれていて良かったです。
息子の言っていた足指がないことだけが理由では絶対にありません。
それは誤解がないように、と思います。
だって私自身も手の指がないクライマーの知人がいます。
最近ではピオレドールを受賞した山野井さんも有名ですね。
山好きの人間にとっては手の指、足の指が1本、2本なくても山に登らないという選択肢はないだろうと簡単に想像できます。
いろんな想いや葛藤があったけれど、「自分にとって何が大切なのか」という事を考えて、考えて、妻や子供たちを支えるという自分の行動に納得しているというところが素晴らしいポイントだと感じます。

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女性が家庭を離れて挑戦するということ

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当時に比べると現代社会は、女性に対する理解や風潮はかわってきていると思います。
しかし現在においても女性が家庭を離れ半年間の海外登山に行くという事は簡単ではないと思います。
私も女性ならではの転機である、結婚、出産、子育てとライフスタイルの変化にあわせて山に行く頻度や山行スタイルも変化してきました。
山岳会に入りクライミング・アルパインクライミング・アイスクライミングとするようになり、普通のハイキングや登山よりもさらに女性が山を続けていくことのハードルの高さを感じます。
自分の周囲を見渡すと、頻回にクライミングへ山、岩、ジムへ通っている女性のほとんどが未婚か、もしくはお子さんがおらず夫婦2人家庭という方ばかり。お子さんがいても大学生や社会人など、ある程度子育てがひと段落している人ばかりです。

本当にやりたいなら、方法は探せばあるのだと思います。
田部井さんが開いた道が、今の私たち女性の自由や挑戦の礎になっていることは間違いありません。
まとめ

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人生の終盤、癌と戦いながらも高校生と富士登山へのプロジェクトは、これまで支えてくれた人々や社会への恩返しへの想いを感じました。
時代を超え、山を愛する女性の生き方としても勇気づけられる素晴らしい作品でした。
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