今年の冬は雪がない!!とあちこちの山で聞かれますね。
今季、一番の厳冬期らしい寒さの中、冬季クライミングを山の会の山行で行ってきました。
年間を通して人気の山域、八ヶ岳へ。
八ヶ岳の主峰、赤岳へバリエーションルートの主稜から登ります。
雪山テント泊2回目の体験談や、赤岳主稜を登る際の気を付けるべきポイントなど記録します。
バリエーションルートの赤岳主稜とは
バリエーションルートとは
頂上や終了点に至るための、一般ルート以外のルートを言う。
参考引用文献:山と渓谷社 登山技術全書⑥アルパインクライミング
赤岳西壁 主稜ルートとは
西壁の中央、北峰にむかってダイレクトに突き上げる岩稜で、ロケーション、内容ともに大変すばらしい。快適さは八ヶ岳随一ともいえる大人気ルートである。
参考引用文献:白山書房 新版冬季クライミング
適度な岩場と雪陵が続き、これから本格的な冬のバリエーションルートを志す中級者に人気がある。
参考引用文献:白水社 日本登山大系普及版 八ヶ岳・奥秩父・中央アルプス
積雪期のグレード1級。
山行概要(ルート、目的、山域など)
山域・山名 南八ヶ岳・赤岳主稜&阿弥陀岳北稜
山行目的 積雪期の南八ヶ岳バリエーションを登攀
期間 2019年2月9日(土)~11日(月)
参加者 4名
難易度 歩速:健脚
※難易度は私の所属している山岳会の基準によります。
コース計画
一日目 集合~美濃戸口~行者小屋テント場
二日目 テント場~文三郎分岐~主稜取り付き~6p目雪壁~7p目小垂壁~稜線~赤岳頂上~文三郎道を下山~行者小屋テント場
三日目 テント場~ジャンクションピーク~第一岩峰~第2岩峰~ナイフリッジ~阿弥陀岳~中岳沢~行者小屋テント場(テント撤収)~美濃戸口~帰路
※実際には三日目の阿弥陀岳は、天候と師匠の体調を考慮し中止とし、朝食後にテント撤収し下山しています。
一日目
まずは師匠が美濃戸口の登山口で登山計画書を提出しました。
みんなで協力し合い、重いテント泊装備を、行者小屋のテント場までかつぎ移動です。
今回はパッキングの仕方や装備の工夫をしたおかげで、前回のアイスクライミング山行時よりも快適に歩けました。
毎回、思うのですが美濃戸口~テント場までのなんて長いこと(;^_^A
荷物が軽ければなんともない林道歩きですが、テント泊装備の時はついついしんどさから弱気になってしまいます。(特に下山)
そんな話を師匠にしていたら、残雪期の北アルプスの涸沢のテン場までの歩きの方がよっぽどしんどいとのこと。
確かに距離が全然違いますものね。
これくらいの距離をテント泊装備で歩けないと、残雪期北アルプスの山行には連れて行ってもらえないということか…💦
北アルプスのバリエーションルートも憧れるな♡
一日目はあいにくの曇り空。
でも、テント場までもってくれたらそれでOK!!
私たち一行は南沢ルートで行者小屋テント場まで向かいました。
テント場に到着すると、すでにたくさんのテントが張ってありました。
なんとか、師匠の5人用テントを一張り、スペースを造り張ることができました。
雪を踏み固めで整地する作業も、皆で協力し合い、住空間を快適に保てれるよう頑張りました。
天然の冷蔵庫
テント設営の準備ができたら、師匠に食材を荷物から出すよう指示がありました。
私は今回二日目の夕飯の食事担当です。
食材は一まとめに保冷バッグに入れてますので、それを師匠に渡すと…
テントの脇に大きな穴を掘り、そこに食材の入ったバッグを入れ、また雪をかぶせます。
これで天然の冷蔵庫の出来上がり!!
翌日、夕飯の準備の際に掘り起こしたら…。
おかげ様で二日目の夕飯準備は問題なく出来ましたよ✌
一日目の夜は、テント内のザックの中に行動食用に買っておいたパンをしまっていたのですが、パンはカチコチ💦
テント内では起床時にはシュラフカバーが結露でベタベタ。
テントの端に置いておいた荷物には霜が付着しています。
おにぎりやパンなどの食材は、凍らないように寝る時にシュラフの中に入れておくべきでした。
この違いにびっくり!
雪の中に埋めるだけですが、雪で作った冷蔵庫は雪国古来の知恵、雪室(ゆきむろ)の応用編ですね♡
二日目
さあ、今回のメインルート、赤岳主稜を登攀する当日です。
朝、4時起床。
朝食、準備を整えスタートです。
でも、雪で埋まっているからほとんど階段の脇を歩いてます(;^_^A
写真を見てもらったらわかるように、日陰です。
そう、赤岳の西壁というぐらいですから…。
もちろん太陽は東から昇るわけで…。
寒さと、これから本番の登攀をする緊張感で絶景を楽しむ余裕のない私。
文三郎道から取り付きへの分岐は、ものすごい風で寒さも半端ないです💦
取り付きへ向け、西壁をトラバースするのにアンザイレンで進みました。
いったん西壁に入ってしまえば風は大丈夫なのですが、とにかく寒さが身にこたえます。
取り付きへは文三郎の最後の梯子を登りきったあたりから左の急な雪壁をトラバースする。ただしここは雪の状態が悪いと雪崩れる可能性もあるので、状況判断は慎重に。50mほどトラバースするとチョックストーンのある顕著なチムニー下で、これが1p目となる。
参考引用文献:白山書房 新版冬季クライミング
am7:35 主稜の取り付き。
慎重にトラバースし、取り付き下部へ到着。
先行者が1p目をクリアして私たちグループの順番が来るのを待ちました。
先輩が寒さでブルブル震えています。
私もブルブル💦
師匠もメンバーみんなも鼻水タラタラ💦
ポイント
赤岳主稜は人気ルートなため、クライミング時の渋滞が予測されます。
低体温症や凍傷予防に
防寒対策は必須です
過剰か?!と思えるぐらいのダウンを持って行ってOKだと思います。
ウェアだけでなく、ヘルメットの中に帽子、顔面、首元のバラクラバ、手足の保温(グローブや靴下、ホッカイロなど)やりすぎかも??と思える程防寒対策をしっかりすることをお勧めします。
取り付きでどれだけの時間、待っていたのでしょう。
私たちの後続も、続々と取り付き手前までトラバースし進んできています。
寒いけど、ここでボーともしていられません。
主稜で一番の難所がこの最初の岩場です。
先行者がどのように登っているのか、しっかりと見させていただき、参考にします。
ではでは、登攀スタート。
今回、はじめて最初から最後までbenさんとペアで登りました。
完全に私はビレイヤーで、リードはbenさんのみ。
全部で9ピッチ。
ピッチをきったので、きっとbenさんも疲れたことと思います。
上記写真はp6に取り付く師匠。
今回は4人パーティーで、二人一組。
いつにも増して写真を撮る余裕がありません。
安全第一で、皆、確実に登っています。
雪が少なく、ザイルを邪魔に感じる場面も多々ありました。
雪とアイスと岩肌がもろに出ている場所とのMIXで、
山の会でのアイゼントレーニングはこのためにあったのだと実感です。
ポイントとなる岩場は上中下に都合3か所あり、それぞれⅢ級程度の完全な岩登りとなる。
参考引用文献:白山書房 新版冬季クライミング
途中、途中で渋滞の順番待ちをしながら登攀。
絶景を堪能!!
と、言いたいところですが、私は寒さの方が勝っていました(;´д`)
寒さに耐えながら、じっと順番待ちをしていると、
文三郎道を歩く登山者を眺めながら、私もあっちを歩けばよかった~なんて弱気になっています。
pm14:00 赤岳山頂に到着。
寒さで弱気になることもあったけど、全員無事、登頂することができました。
山頂の岩陰で風をよけ、小休止。
ここでザイルやハーネス、ガチャ類もザックに片付けました。
昼食がわりのパンを少し食べました。
暖かい飲み物や、チョコレートの甘さが身に沁みます。
文三郎道から上がってこられた登山者さんに、
女性登山者
登っているところを見ていました!スゴイところを登っていましたね!!
なんて声をかけられたりして、休憩をしながらやっと達成感を感じることができました。
登っている時は必至だから、登り切った後に改めて自分が急な雪稜を登っていたのだと実感がわいてきました。
下山はのんびりと。
文三郎道をゆっくりのんびり、登ってきた西壁を眺めながら下山しました。
主稜を登る際、渋滞を避け、遅め出発するというのも選択肢としてはアリかもしれません。
のんびり下山し、テント場まで戻ってきました。
本日は私の食事担当の日。
メニューはもつ鍋!
みんなニンニクやトウガラシのきいたもつ鍋を「美味しい♪」と言ってくれていたので、私も一安心。
みんなで暖かいお鍋や、お酒のお湯割りで体の中からあたたまりました。
そして、翌日の登攀について検討。
実は師匠の体調があまりよくなく…。
師匠は「大丈夫」と言い張るけれど、なんとか説得して翌日の下山を決定しました。
三日目
阿弥陀岳、赤岳方面をテント場から振り返ると、山は真っ白、ガスの中。
朝食後、小雪のちらつく中、テントを撤収しました。
うん。予定を繰り上げ下山することに後悔なんてありません。
師匠に元気でいてもらうためにも、下山で間違いありません!!
参考
南沢ルート、美濃戸口までの林道も一部アイスバーン化、凍結している箇所があり転倒注意です。
チェーンアイゼンを装着がベストですね!
みんなで無事に美濃戸口まで戻ってくることができました。
まとめ
アルパインクライミング、冬季クライミングの入門編とも言える八ヶ岳西壁主稜の山行。
天候やメンバーに恵まれ、幸いにも安全無事に登攀、下山することができました。
雪山の美しさを堪能させていただきました。
-20度の寒さとはどういうものか、身をもって実感。
重いザックを背負い氷雪を歩くスキルの修練の必要性も感じました。
ただ登ることだけが登山ではなく、アルパインでは歩けることが基本中の基本で体力が必要。
キャンプ地でのテントの設営や、食事の工夫、山中での生活スキルも必要です。
いざ、という時に正しい判断ができる登山者になれるよう、今後も山の会の山行はなるべく参加して学びたいと思います。