- 山岳会に入会し4年(活動あり)
- ソロハイキング~アルパインクライミングまで
- 無積雪期~残雪期雪山登山まで
- 積雪期アイスクライミング
- 年間山行回数40回程度(会山行・個人山行含め…ほぼ毎週)
山登りが好きで、山岳会に入会しようか、やっぱりやめておこうか迷っている皆さんへ。
- 山岳会って怖そうだな…
- 山岳会って初心者でも入れるのかな…
- 山岳会って入ると面倒くさくないかな…
こんなお悩みにお答えします。
この記事を読むとわかること
- 自分は山岳会に向いているかどうか、ざっくりとわかる
- どんな山岳会なら入ってみたいのかイメージができる
- 山岳会のメリット、デメリットがわかる
この記事では、日本の登山史や山岳会の歴史など難しいお話はしません。
山登りのイロハが詰まった登山のHow to本や、カラー写真が盛りだくさんの雑誌、SNSでの現地情報など、現在の日本は初心者が登山をはじめる敷居が低くなり誰しもがはじめの一歩を踏み出しやすい世の中になりました。
ただ登山の技術を学びたいだけならばガイドさんに依頼したり、専門店が主催する登山学校、ツアー会社のツアー企画などに参加する事で、自身の目的を達成させることができるでしょう。
しかし、今、なぜ山岳会をおすすめするのか?
筆者の山岳会での経験を交えながら、解説していきます。
山岳会にはいろんなタイプがある
山岳会と一言で言ってもいろいろあります。
歴史ある名のある山岳会から、山岳会と呼べるのか?疑問に感じてしまうような山岳会などなど…
名前の付け方だけでも、動物の名前であったり植物の名前であったり。
名前が可愛らしいので、易しめな山行が多いのかな?と思いきや、活動内容を聞くとかなりハードなアルパインクライミングをしている会もあれば、「じねんじょ」の名前から山岳会とは思われずに、本当に野菜のじねんじょを掘る会と勘違いされたという笑い話まで(笑)
山岳会というより、登山サークル? ハイキングクラブ? などなど…名称も実質の活動も千差万別です。
- ハイキング中心
- 100名山中心
- アルパインクライミングに力を入れている(沢登りやアイスクライミングまで)
- 海外遠征がある
- ほぼ活動していない
- 会員数が極端に少ない
- 年齢層に偏りがある
- 組織そのものが大きく、ハイキングや登山など各活動ごとに部としてわかれている
- 地元の山を活動拠点にしている
- 遠征登山など地域にしばられず多方面へ活発に山行している
- 地域の自然保護活動・登山道や避難小屋の修繕などに力を入れている
- 若手(もしくは中級・初心者)ばかりで、熟練者が少ない
名前に惑わされ、よくよく考えないで入会した後から後悔した、とならないようにしたいですね。
山岳会に入るなら事前の情報収集はしっかりと!
山岳会のデメリット
みんな気になる山岳会に入会したならば、避けては通れない??かもしれない、あれやこれ。
- 例会・総会への出席
- 会の運営にかかわる活動の参加
- 会費
- 清掃活動や、登山道の修理保全活動などの参加
- 指導者的存在の有無や力量の差
- グループ間の派閥や人間関係のいざこざ
- 新人の育成
- 山行後や例会後の飲み(呑み)コミュニケーション
何をデメリットと感じるかは人それぞれ。
上記のようなことは、だいたいどこの会でもあるようです。
山岳会の運営について
山岳会はお友達同士の仲良しクラブではないので、組織としてきちんと運営されています。
会員から会費を集め、その収支の中で会の活動にかかわる様々なことをやりくりしています。
運営はもちろん会員がボランティアで行っています。
会計や、総務、広報、企画や教育、遭難対策、会報誌の作成などなど…多岐にわたります。
これらの役割をそれぞれが担い、例会や総会などで活動報告を行います。
参考
私の所属している山岳会では、この数年でコロナの影響から、例会・部会を会場で集まって行うのではなくズームでの会議に変更、例会の回数の縮小など変革がなされてきました。
時代の変化に伴い、山岳会の運営もどんどん変化していっているようです。
飲む(呑む)コミュニケーションについても、コロナに伴い数が激減!
お酒の席が好きな人にはさみしいかもしれませんが、わずらわしく感じる人にとっては良い変化かもしれませんね。
下記、2枚の写真は三重県にある御在所岳の裏道登山道にある七の渡しと四の渡し(橋)です。
御在所岳では集中豪雨の後など、増水後に沢にかけられた橋が流されてしまうことが度々あります。
2022年、この夏もすでに2回も流されています。
しかしその都度、山小屋の皆さんや地元山岳会の協力のもと復旧作業が行われ、翌日には橋が架けられていました。
山岳会の会費について、こちらもコロナが良い例となります。
コロナの影響を受け、私の所属している会でも山行数が激減しました。
あまりにも山行の企画が少なく、自身が参加している山行回数が少なすぎると、会費を支払っているのに山に行けていない事態からコスパが悪く感じてしまい、会に所属している恩恵が感じられないことから退会を考え出した…
なんてことも事実ありました。
年間で1万円弱の会費を支払っているのに、年の会としての山行回数は片手で数えられるだけ…
自ら積極的に会の活動に参加することが、会費を支払った価値を上げるのも下げるのも自分次第といったところでしょうか。
ポイント
一番気になる人間関係について
こればかりは避けて通れないのが人間関係のわずらわしさ、でしょうか。
職場でも、趣味のサークルでも、どんな所にいてもそこに人間が存在する限り、気の合う人ばかりとは限りません。
基本的には「山が好き」という共通項で集まった人間関係。
むしろ、気の合う人が多いと思います。
山岳会の中にて、人間関係でもめるとしたら…??
しいていうならば、こんな例はいかがでしょうか?
指導者と言えるリーダー格の人が3人いたとします。
それぞれに苦手分野があったり、得手不得手、年代や性別、性格の違いがあり、3人3様の良さがあります。
一人の新人会員が入会してきました。
まだ新人なので、それぞれの特性や人間関係もわかりません。
何もわからず、3人それぞれの山行に参加してみます。
しかし、同じロープワークの手技でも教え方は3人それぞれ微妙に違い、表現は違っても同じ事を言っているなと思える部分があったり、全く違うことを言っていたり…。いったい何が、正解なんだろうと、混乱してしまいます。
登山やロープワークなどの技術だけでなく、3人のリーダーの山行それぞれに、なんとなく明るい雰囲気、厳しい雰囲気など特長があり、徐々にグループにも派閥があることがわかるようになってきました。
あるグループでは、他のグループの噂ばなしばかりしていたり、他のグループでは他の指導者の失敗談を膨らませて話し盛り上げていた…などなど。
こんな事が発端で、あそことここのグループは仲が悪い…といったイザコザ?は、まあ、たまにあります。
山岳会では、リーダー格となる人のほとんどがガイドやインストラクターの資格を持たない一般人であることがほとんどです。
中には、何かのスキルがある人もいるかもしれませんが、昔、大学のワンゲル部で鍛えられたとか、ヤマヤとしての長い経験から自身の知識技術を伝達してくださっています。
時には会の企画で、外部講師を呼んでの講習会や勉強会、講演会ということもありますがそれは年に数回あるかないかのこと。
みんな、お互い様、ボランティアなのです。仲間が仲間を教え学び支えあう。山岳会は、これが基本となります。
山岳会は個性豊かな人間味あふれるヤマヤの集まり。
時には心無い人の言葉の端に、イヤミを感じて傷つくこともあるかもしれません。
でも、それは山岳会に限らないことですよね。
逆に、同じような境遇で集まってきた間柄、気の合う仲間ができる確率も高いです。
例えば私の師匠(70歳代)もそうでしたが、言葉や態度の厳しい中にも、自然の怖さや素晴らしさを経験談を踏まえ伝えてもらえるという機会も多くありました。
指導の仕方ひとつとっても、年代が上の方々の教え方が「見て覚えろ」的でなかなか理解に時間がかかることもあるでしょう。(世代交代でだいぶ、そんな年代の方も少なくなってきました)
山岳会でなければ様々な世代のヤマヤさん達と出会い、会話するということも、なかなか得られる機会ではありません。
山岳会に入ると、世代の違う先輩や師匠達とコミュニケーションがあるからこそ、その山の歴史を知り得たり、「こんな時はこうする」という経験から得られた知恵を学んだり…。わずらわしさ、に勝る、貴重な教えや体験、人間関係ができるメリットもあります。
- わずらわしい人間関係
- 正確な情報・わかりやすい指導しかしてほしくない
- 新入会員の面倒を見るのは嫌
と感じる方には山岳会は向いていないかもしれません。
山岳会のメリット
メリット
- 山の仲間ができる
- 一人ではできなかった山行に挑戦できる
- 経験を積みながら、知識・技術が身につく
- 費用を抑えられる
- 個人で行くより家族や周囲に(山に登ること事体)安心してもらえる
費用面が安くなる
ツアーや、登山学校、ガイドへの依頼に比べると、かなり費用が抑えられます。
誰かにアテンドしてもらう、ということへ対しての費用が発生しないため、交通費や食費、宿泊費の実費のみです。
交通費はメンバーで1台の車へ乗り合いにしたり、レンタカーやタクシーを利用しても割り勘になるため、個人で山行した場合に比べかなり割安です。
具体例
〇〇岳2泊3日 参加者一人の料金
- ガイド山行 10万円
- 山岳会山行 1万円
テントや食器、無線など会の備品を使用することも可能だったりします。
また山岳会の中には、会員の中に気象予報士がいて勉強会を開いてくれたり、看護師がいて応急処置の勉強会をしてくれたり、会費の中で学ぶ機会も多くあります。
私の所属する山岳会もそうですが、定期的にレスキュー訓練も実施され、自らのやるき次第では費用をかけずに学ぶ場がたくさんあります。
家族や職場など周囲から理解が得られやすい
あなたの周囲には登山をする人はいますか?
最近はアウトドアブームでハイキングやキャンプをする人がかなり増えてきました。
しかし本格的に山を縦走したり、山小屋やテントに泊まる登山や、クライミングをしている人は少ないのではないでしょうか?
そんな時、登山を知らない人にとっての山のイメージはテレビニュースで見るような遭難、滑落、事故の悪い話題の方が印象に残るようです。
「危険なことをしている」というイメージばかりが前に出て、登山やクライミングをしない人に自分が夢中になってしているこの活動の良さを理解してもらうのは至難の業です。
例えば、家族や身近な人に「次の週末は剱岳に登ってくるよ」と話しをしたとしましょう。
家族なら、滑落やケガなど事故の心配をされる方がほとんどだと思います。
しかし、「次の週末は山岳会で剱岳に登ってくるよ」と話しをしたらどうでしょう。
実際には危険度のリスクとしては、ソロなのか、グループなのかの違いぐらいの変化かもしれませんが、
家族にとってみると「(多分)ちゃんと山に慣れた人たちの集まりで、計画的に安全に登って下山できるだろう」という印象を与えることができるようです。
危険を伴う遊びをしている事には変わりはないけれど、少しでも周囲に心配や不安を与えずに、安心して山へ送り出してくれる確率は高くなります。
個人では出来なかった山行にチャレンジできる
例えば、自分のめざしている山の目標が「百名山、全山を登頂すること」だとしましょう。
個人ではなかなか根気もいて、途中で頓挫してしまうこともあるかもしれません。
しかし、山岳会の仲間と一緒だからこそ目標を達成できた!というのは現実的に十分可能な話です。
あれは4年前の4月。
私の場合、山岳会に入ったきっかけは知人からの紹介でした。
ある時、知人が自身の入会している山岳会の山行で「笈ヶ岳」(おいずるがたけ)という山に行くと言います。
なんでもその笈ヶ岳は残雪期にしか登ることのできない北陸にある珍しい山であり、なかなか入山できる期間も限られてくる山だから、こんな機会は滅多にない、山岳会外部の人でも参加して良いので、よかったら一緒にどうですか?と誘いを受けました。
これはまだグレートトラバースで田中陽希さんが有名になる前のお話です。
まだまだ一般登山道の山道を歩く程度でしか経験のない私は、雪山やバリエーションルートに挑戦する機会がありませんでした。
こんな嬉しいお話は滅多にない!と考え、ご一緒させていただくことに。
山行リーダーの師匠からは前夜泊で山菜の天ぷらがふるまわれたり、早春の高山植物を愛でたり、藪漕ぎや、渡渉、雪山歩きなど…何もかもが新鮮で長時間行動のしんどさよりも楽しさの方が勝っていました。朝日に照らされる北部白山の山並みが素晴らしく、あの時の光景をもう一度見てみたいなと、今でも思い出されます。
山の楽しみ方やスタイルはそれぞれ。山岳会に入ると、岩登りやアルパインクライミング、沢登りなど…新しいジャンルの山の楽しみ方に目覚めるかもしれません。山岳会から新しい山の世界が開くかも?!
実践しながら山の知識、技術が身につき、素晴らしい仲間ができる
最近では登山アプリやSNSからの情報、GPS機能のついた時計やスマホの活用で、以前なら経験の浅い登山者が立ち入ることはなかったようなルートでも、まだ経験が豊富とは言えないような登山者が多くチャレンジするような時代になってきました。
極端な話ではありますが、例としてSNS上でしか会話をしたことがない即席で出来上がったグループが難易度の高いルートへ入山し、遭難したということもありました。
近頃では動画配信しながら事故にあってしまったケースが記憶に新しいです。
力量にあっていないルート選択により道迷いになっている(なりかけている)といった場面にもよく出会うようになりました。
先にご紹介した5月の剱岳登山では、実際に一人の登山者から「ここ(早月小屋のテント場)から、山頂までどれくらい(時間)かかりますか?」と質問され私もびっくりし、その登山者が無事に登頂下山できるのか、かなり心配になったこともありました。
山岳会では年齢も性別も職業もバラバラ。
山が好き、という共通のこと以外は何の接点もない人たちが集まり一つの目標に向かい、チームとなり協力しあいながら山行を達成させます。
計画段階から、必要であれば事前の実技訓練を重ね、お互いに切磋琢磨。
自分の役割分担でわからないことがあれば先輩にたずねたり、山や道具のことを情報交換したり、次の山行までに至らないことはないか注意しあったり。
信頼できるリーダーのもと、実践しながら山の技術を学び経験を重ね、自分の身につけていきます。
山行の中でヒヤリハットがあれば、後に会で話あい対策をたてることもしますし、他者のヒヤリハットを共有し学ぶこともできます。
そうして少しずつスキルアップしていくことができます。
いくつもの山行を重ねながら、仲間の中から信頼できるザイルパートナーができることもあります。
山岳会の仲間で、お互いの力量がわかったうえだからこそ、一緒に少しチャレンジな山行を計画することも。
登山やアルパインクライミングなど山での活動は、時に命の危険と隣り合わせな活動だから、信頼できるパートナーや仲間と一緒に山行しよう。
メンバー全員が安全に無事、下山し帰宅できることが重要です。
山岳会の選び方 ポイント2つ
山岳会に興味がわいた、山岳会に入ってみたいという方は、注意して意識したいポイント2つ
入会の目的を明確にする
山岳会に入る目的は人それぞれ。
あなたが山岳会に入りたい目的はなんですか?
- 一緒に登る仲間がほしい
- 登山技術のレベルアップを図りたい
- 会の運営や若手の育成、地元の山や自然保護活動への貢献を通じ、仕事ではない場で社会と関わっていきたい
- ハイキングがしたい
- 山スキーがしたい
- アルパインクライミングがしたい など
組織はしっかりしているか?
組織として規模が大きい方が、人間関係のしがらみであったり、会の運営であったり…「会にしばられる」という事は少なくすむかもしれません。
会計監査や運営報告がしっかりされている事が望ましいです。集めた会費の行方が、使途不明なんてことでは、だいぶ不安です。
その山岳会は教育体制はちゃんとしていますか?
明確にレベルアップしていけるような教育体制が整っている方が、自分のレベルにあった山行や活動を選びやすいです。
その会の評判はどうですか?
友人知人で知っている人があれば話を聞いてみましょう。もし誰もいなければ、地元の登山用品店や山小屋で話を聞いてみるのも良いでしょう。
ある程度、入りたい山岳会が決まったら、まずは見学や体験入会に行ってみよう。
その山岳会に入ることで、自分がさらに山を楽しめているイメージがわいたなら大丈夫そうですね!
山岳会は一度、入会したからといって退会や休会しても良いのです。
自分に合わないなと感じたら、違う山岳会に入りなおしたってかまいません。
実際に、違う山岳会に入りなおす人、掛け持ちする人、山岳会ではなく「同人」を作る人、「会」にとらわれない仲間を作る人…いろいろです。
ただ、私のように趣味の範囲で山を楽しんでいる人間には、山岳会というのは活用しやすい組織スタイルだと思います。
特に、より高度な技術が必要となるアルパインクライミングなどの活動では、安全に山を楽しむために山岳会に入会している人も多いです。