どうして自分は山登りをするのか?
そんなふうに、自分の登山や山登りの嗜好についてを考えたことありませんか?
なぜだかわからないけれど、
「昔から山が好きだ」とか、
「気が付いたら休日は山登りばかりしていた」
という方も多いのではないでしょうか?
山登りをする方なら、「どうして自分は山登りをするのか?」そう考えた事は、一度や二度はありますよね。
私も、山を歩き自然の美しさや季節のうつろいを感じながら登頂し、達成感を感じる事が目的だった登山のスタイルから、
クライミングやアイスクライミングを通し、より大自然の中へ、道具を使用しながら、より一層、季節を問わず毎週末のように足げく山に通う、そんな生活スタイルに変化してきました。
好きな事を続けていたら、どんどんと山にのめりこんでいき、今に至ったというのが単純な感想です。
今回、「山と渓谷」2022年9月号の角幡唯介さんの「角幡唯介の あの山を登れば」を読了し、まさに言い得て妙だと感じましたのでご紹介いたします!
あなたはどっち派?
山登りの嗜好や様態は、人によってスポーツ派とワンダリング派のふたつにわかれると思う。スポーツ派はある種の競技性というか、肉体的な能力の向上とその証明を山にもとめるだろう。ワンダリング派は山に登ることによって自然への没入と調和を目指すだろう。
そうなんですよね。
山登りの嗜好や様態は人それぞれ。山を歩いているといろんな人に出会います。
- 近場の低山ハイキングが主
- 深田久弥の日本百名山を踏覇したい!
- 山飯を山で楽しむのがメイン!
- 絶景、山岳写真を撮りたい!
- 高山植物を愛でる登山が好き
- トレイルランニングで山を駆け巡る
などなど…数えだすと切りがありません。
それほど山の嗜好や様態は多種多様です。
角幡さんの言う通り、大きく大別するとスポーツ派とワンダリング派に分かれますね。
スポーツ派が、コースタイムをどれだけ短時間で歩けたかや、どれだけの山を登頂したかなど自身の肉体的な能力の向上が山で証明されるタイプの山登りであると言えます。
対する、ワンダリング派とは?
ワンダリング?
実は、私はワンダリングという言葉はあまり聞きなれないため調べてみました。
ワンダリング(wandering)
(あてもなく)歩き回る。放浪する。さまよう。うねりながら流れる。【形容詞】
散歩。放浪。漫遊【名詞】
直観的に自分はワンダリング派だと感じました。
さらに言うと、名詞的な意味でのワンダリングの中に「漫遊(まんゆう)」とあります。
漫遊…気の向くままに諸方をまわって歩くこと。心のままに旅する。
とあります。
まさに!自分の行ってみたい山に気の向くまま(山へ)旅する事。
そんな登山スタイルの方が大多数なのではないでしょうか。
ワンダリング派は山に登ることによって自然への没入と調和を目指すだろう。
贅沢な悩み
でも欲張りな私は、登攀もやりたいという贅沢な悩みをかかえていた。それも冬山で。
ああ~!わかります。
そうなんです。
今の私にぴったりな気持ちが記事の文章の中に現れ、びっくりしているといった感じです。
私は一時期、春の滝谷(北アルプス北穂高岳)によく通っていた。目的はC沢右俣奥壁にできる氷壁だ。とてもマニアックなルートで、ここに魅力的な氷壁ができることは「日本登山大系」や一般的なルート集にも紹介されていない。
角幡さんは探検部の後輩Sさんと滝谷登攀中に、見事な蒼氷が発達しているのを見つけました。
偶然みつけた氷壁との出会い。
氷壁は積雪量や気温などその時の状況により、氷の発達の仕方が大きく変わります。
偶然にみつけたその氷壁を登りたい気持ちにかられた角幡さんは滝谷に通い、数年後の春に見事、初登を果たしました。
パートナーのひとりは「初登の氷壁だぞ。ルート名は何にしようか」と言ったが、内容的に人にほこるようなテクニカルな要素は何もないし、そもそも記録性にはまったく関心がない。登山とはどこまでも自分自身の問題だというのが、私の考えである。
え?パートナーの方が言う通り、初登の氷壁ならルート名をつけるのも、記念になりいいのでは?
ついつい私も読んでいて、そう思ってしまいましたが…。
『自分の山』を登ること
上記写真は、2022年1月。ザイルパートナーと、岐阜県小秀山の夫婦滝の雄滝を登攀をしたときのものです。
山岳会に入会しアルパインクライミングと出会い、コツコツと練習を重ねてきた結果
この滝の登攀は「誰かに連れて行ってもらう登攀」から「誰かに頼るのではなく自分たちで考え、判断し登攀した」と実感できたアイスクライミングの経験でした。
実際には2021年に八ヶ岳の裏同心など、ザイルパートナーと二人での登攀経験は他にもあります。
しかし、この夫婦滝の登攀は別格の充実感がありました。
この冬のアイスシーズンはじめ。
夫婦滝での他者の登攀歴はまだ情報としてありません。
出来立てホヤホヤのまっさらな氷です。
氷結状態はまだ発達が十分と言えません。
しっかりルートファインディングをし登攀可能か判断しながら登る必要があります。
そして、アイスクライミング初心者ではまず難しい、繊細な氷を登る技術もそれなりに必要でした。
【アイスクライミング】小秀山 乙女渓谷 夫婦滝(雄滝)山行記録2022年
この記事は岐阜県中津川市にある小秀山の夫婦滝(雄滝)をアイスクライミングで登攀した山行記録です。 偶然にも一般のアマチュアカメラマンの方が、その過程を写真に収めてくれていたため、 美しい氷瀑の写真をふ ...
続きを見る
この写真は、2022年1月29日に奈良県大峰山脈の地獄谷のグランドイリュージョンという氷瀑を登った時のものです。
全部で3ピッチ。
はじめからバーティカル(垂直に近い)氷、乗越の手前ではハングしている箇所もあります。
ここ10年近くしっかりとした氷結がされず、ずっと再登がされていなかった大きな氷瀑の一つです。
実力のある仲間がオールリードで3pを完登!
ルーファイも、ロープワークも総合的に実力のあるリード者のおかげで、私たちフォローもノーテン(テンションをかけない)で登ることができました。
この時の登攀、心に残る印象深いシビレル1本でした。
チームのメンバーはそれぞれに今も活躍されていますし、新しい事に挑戦している人もいます。
まだまだ日本全国に、初登から再登されていないような氷瀑がたくさんあるようです。
私にとっての「自分の山」
滝や岩の大小は関係なく、初登も再登も関係ない。
クライミング(アイスクライミング)でパートナーと互いにリードを交代しながら、そのルートを楽しみながら安全に登ることが目標です
次号はどう続くのか!?
自分にとってのみ価値をもつ山を見つけることが旅であり、そういう「自分の山」を登ることが登山だ。
実はこの、角幡さんの「あの山を登れば」は次号に続きます。
今回の号では、私なりの解釈は、大きな登攀記録ではなくても、「自分の山」はそれぞれにあると理解しました。
例えば私の例ですが…
子供が小さくおもうように高山に行けなかった時もありました。
しかし、時間をみつけチョコチョコと近場の低山を日帰りで楽しんでいましたが、それも「自分の山」だったと理解しています。
次号、どんなふうにお話しは続くのか楽しみです。